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OBSERVE Magazine

オジャーズ ベルンソンのグローバルマガジンでは、最新のインサイト、オピニオン、特集記事をお届けします。

M&Aを成功させる4つのベストプラクティス

日本企業がクロスボーダーM&Aのリスクを最小限に抑え、成功への道を歩むためのアドバイスをまとめた。

成功の可能性を高める方法を探るため、クロスボーダーM&Aの経験を持つ様々な業界のエグゼクティブにインタビューを行い、彼らが直面した問題や、大規模なM&Aが企業にどのような変革をもたらしたのか、その過程で得た教訓等について話を聞いた。

白書の後半では、M&Aを成功させるベストプラクティスを紹介する。

前半 リンク では、M&Aを通して経験した企業変革について紹介した。

1.明確な戦略的ビジョンを持つ

成長はどの企業にとっても追い求める価値のある目的であるが、インタビューしたエグゼクティブの多くは、その目的は明確な戦略に基づいたものでなければならないと強調している 。

企業の戦略や目標が明確に示されていなかったり、十分なデューデリジェンスや準備がされていない状態だとすれば、そのM&Aが長期的には成功する可能性は低くなる 。

あるエグゼクティブは簡潔に述べる。「すべての買収は、明確に定義された我々の戦略と成長目標に合致したものでなければならない」

製薬会社のCFOもまた次のように付け加えている。「 規模を追いかけるよ うな買収ではなく、我々に変革や、インフラや、新しい販路をもたらすような、そして我が社の包括的な企業戦略とビジョンに合致した買収を求めている」

ある最高戦略責任者も、M&Aに先んじた議論の重要性について言及し て い る 。「 経営陣は、 それぞれ個別の投資機会について、会社の中核技術との関連性や潜在的な相乗効果の観点から協議を行う。その投資が中核技術領域からどの程度かけ離れているかによって、リスクの 大きさが決まり、チームとしてこのリスクをコントロール可能だと判断すれば投資を進める

2. M&Aエキスパートになる

潜在的なリスクとして、あるエグゼクティブが強調したものに 、社内でのM&A関連金融リテラシーの不足が挙げられる。

製薬会社のCFOはこう指摘する。「投資銀行はM&A取引自体に関してはアドバイスをしてくれるが 、買収する側の企業自体が 、これから自分たちがし ようとしていることはいったい何なのか?ということについては買収する企業自体が事前にきちんと理解しておく必要がある」

社外のアドバイザーに頼りすぎると 、十分な情報もないまま意思決定を行 っ てしまうリスクがあり、長期的に高いコストを強いられることになる可能性 が高まる。

社内にデューデリジェンス、企業評価、交渉、合併後の統合など、クロスボーダーM&Aにおける十 分な経験を有するチ ー ムがあ れば、成功する可能性は大幅に高まる。

過去何度かの案件を経験したあるエグゼクティブはこう説明している。「 今 ではクロスボーダーM&Aに関しては社内には確立した手法があり、必 要な 情報もそろえている。例えば過去の買収価格に基づく200以上の市場の異なる期待収益率と、対象会社の詳細な評価モデルなどがこれに含まれる」

3. CEOによる大幅なコミットメント

多くのグローバルな組織において、真に革新的な変化はトップダウンにより行われる。伝統的な日本企業でもそれは同様である。トップのエグゼクティブが個別のM&A 取引に対して積極的にコミットをすれば、その成 功の可能性は高まることになる。

コンサルティング会社のあるエグゼクティブは 、海外のM&Aに成功しているといわれている日本企業につ い て次のように述べている。「それらのどの企業にも非常に強いリーダーが存在する。それは創業者本人や創業者家系の出身者であったりすることが多いのは確かだが、そうでなくても明確にコミットをしていると認知されたリーダーのみが、既存の価値を打ち砕くような革新的な変革を成し遂げられる。」

ある印刷テクノロジー会社のエグゼクティブも同じ考えであった。「どのような投資機会にも不確実性があるが、幸運にも当社には( 創業者一族の一員で)難しい判断をする覚悟を持ったCEOがいる」

しかし、もともとの創業者一族がトップにいる企業でなくとも、革新を伴う変化を成し遂げることはできる。ビジョンと先見性を持ったリーダ ーであれ ば、よりグローバル化したビジネスにあわせて、自身の役割を再考した上で、変えていく能力を持っている。

ある幹部はこう説明する。「CEOのコミットメントは 、これほど大規模な既存の価値を打ち砕くような変革を行う場合に、欠かせないものだ。当社の現在のCEOは、それを認識した上で、(国内事業に加えて)海外事業における監督責任も担当し、現在では国内・海外すべての地域の事業責任者に直接CEOに報告を行うようにさせた」

ほとんどの世界的な企業ではよく知られた組織階層構造だが、伝統的な日本企業では、国内事業と海外事業の経営責任を一番上のレ ベ ルで CEO と、より国際 経 験豊かなCOOとの間等で分ける傾向にある。

その幹部はこう続ける。「我々の現在のCEOは、国内事業と海外事業の分掌に関する長年の不文律を打ち砕いた。これは前任者の誰も実行しようとしな かったことだ。国際会議にも英語通訳者の言語サポートを受けながら出席するようになり 、他のグローバルな金融機関のCEOや各地の金融規 制当局者と自ら直接に対話 をして い くことで 真のグローバルなCEOとなるべく多くを学んで いるようだ 。このような 経営レベルでのコミットメントは、伝統的な日本企業から世界的な企業へと本当の意味で変容していくには必要なことだ」

トップのリーダーシップによるコミットメントがなければ、場合によってM &A 取引はリスクがより高くなり、合意に至ることも難しくなる。M&Aを実 際に推し進めているエグゼクティブ達は、自らコミットして前に進むより他 に選択肢はないと感じている。

コンサル ティング会 社 の上 級 役 員は次のように打ち明ける。「当社は日本国内特有の企業文化が根強く 、海外での最初の 戦略的買収の際には、保守的 でルール重視の本社 組織と激しくやりあう必要があった 。副社長と私は、取 引の承認に時間をかけている間に、世界的なプレーヤー に なれるチャンスを 逃してしまうのではないかと懸念していた。私たちは自分たちがリスクを負 うことを役員会でも表明し、この投資を進めることに決めた。この比較的小規模な買収は成功し、その後、経営陣は世界進出の考えに対して積極的にな り、さらに大きな投資機会も検討するようになった」

4.進んで適応しようとする姿勢

大規模なクロスボーダーM&A取引は必然的に変革を伴う。私達がインタビューしたエグゼクティブ達は、会社は変革に直面しており、その変革を起こさねばならないという現実を受け入れるタイミングは、M&Aプロセスの過程の中で早ければ早いほどよいと言う。

変化すること、新しいことを学び、取り入れることに対するコミットメントが重要なのである。あるエグゼクティブは次のように述べる。「当社では創業以来の変革へのコミットメントと、新しいものを取り入れ成長しようとする熱意が、組織全体に影響を及ぼしている。長きにわたる戦略的な買収と成長への熱意によって、多角的な事業ポートフォリオが実現した。コングロマリットの経営は必ずしも簡単なことではないが、今では買収にも慣れ、変革し、新しいものを取り入れるべく、今までに得た知識を活用し続けている」

変革に向かう最初の時点でのスピード感が重要だと、製薬会社のCFOは指摘する。

「買収した会社を合併後統合するプロセスは徹底的なもので、必ず取引成立直後に開始している」

買収した会社に適応し、そこから学ぼうとする姿勢がなければ、投資価値を十分に実現し向上させる可能性は低くなる。

日本企業は、自ら進んで経営体制や企業統治体制を変化させ、グローバルな成長を可能にするべく、これらの ベストプラクティス を取り入れて行くべきであろう。

リスクが100%存在しない取引はない。しかし、グローバルでの成長機会を求める伝統的な日本企業は 、これらの ベストプラクティスを実行していくことで、クロスボーダーM&Aからの成果を十分に得られる可能性を高めていくことが出来る。

「日本企業によるクロスボーダーM&A ~戦略を成功に結びつける~」はダウンロード可能です。

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