取締役会、議長、NED
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初めて取締役になるには
全米取締役協会(NACD)が昨年末に実施した調査によると、取締役の48% が「5年前に比べて危機的な混乱の発生頻度が増加している」と認識しており、また過半数が「その深刻度も高まっている」と指摘している。
この調査結果は、取締役会が2025年に直面するであろう複雑な経営課題を浮き彫りにしている。世界各国の取締役との対話においても、こうした複雑さが増す状況下では、「積極的なガバナンス」「戦略的な先見性」「適切なリーダーシップ人材」が必要であることが明らかになっている。
今回は、2025年に取締役会が注力すべき優先課題と、その対応策を紹介する。
AIの導入は、企業にとってチャンスと課題の両面がある。また、各社のデジタル習熟度やビジネスモデルに応じて、その実装フェーズは異なる。
主な課題として、投資コストとリターンのバランス、既存人材への影響などがある。これらを解決するには、試行錯誤を重ねるとともに、外部の専門人材との連携が欠かせない。
取締役会は自社のAI戦略を注視し、関連リスクの評価や、導入に伴うガバナンス体制の監督に取り組んでいる。
テクノロジー部門担当役員あるいは取締役会の一員として、最高AI責任者(CAIO)起用がますます重視されている。
外国からの投資誘致は依然として重要な経営課題であり、特に英国では、政治的な不確実性や規制強化が障壁となっている。世界の投資家からの信頼獲得は急務であり、取締役会は安定性と透明性を兼ね備えた政策の策定を通じて、投資環境の改善に取り組んでいる。
この状況で極めて重要な役割を果たすのが、リーダーシップだ。有能なリーダーは、新興市場における事業機会を見極め、自社をいち早く参入させるとともに、戦略的なパートナーシップを築き上げることで、投資家にとっての企業価値を最大化できる。
地政学リスクの拡大、経済構造の変化、世界情勢の混乱に起因するリスクを軽減するための対策を怠らないことも、取締役会にとっては喫緊の課題である。
このような危機や局面に備えて、組織のレジリエンスを評価・構築しておく動きが広まっている。これは、社内のコラボレーション推進、生産性の向上、従業員の定着率改善にも寄与するであろう。
脱グローバリゼーションと保護主義の台頭により、企業はグローバルな成長機会が制限され、ローカル市場への集中を余儀なくされている。
とりわけ英国企業にとっては、欧州との貿易の自由度が低下したことが、こうした課題を一層深刻なものとしている。取締役会は、内向きな経済環境下においても事業を着実に進めていくために、代替市場の開拓やローカル・パートナーシップの構築を含めた新たな事業戦略を策定・実行している。
持続可能なビジネスは、もはや経営層にとって不可避なテーマとなっている。一方で、この取り組みに伴うコストの負担を敬遠する投資家の存在も無視できない。
昨年までの潮流を前提に、2025年の取締役会は、サステナビリティへの取り組みと投資家の期待との整合をいかに図るかという課題に直面している。
両者のバランスがとれれば、環境・社会的責任を果たしながら、長期的な企業価値の創出が可能になる。ビジネス感覚に優れたチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)の起用は、収益性と持続可能性を両立するうえで有効な施策といえる。
変化する事業環境の中では、サイバーセキュリティ、AI、気候変動、貿易政策といった分野の新たな知識とスキルが求められている。
2025年の取締役会では、従来型のガバナンスの再構築が本格化する見通しである。組織構造の複雑化を避けながら、アドバイザリーボードの構築と活用、短期またはパートタイムのローテーション任期の導入、さらに教育投資によるスキルギャップの解消といった施策が進められるだろう。
ガバナンスの実効性が問われる中、取締役会は自らの目標と監督責任を再評価している。効果的なガバナンスは、多様な経験、スキル、視点をもつ取締役陣から生まれる。
2025年の取締役会は、企業の進化するニーズに応えるべく、定期的な評価と戦略的な後継者育成体制の整備に、これまで以上の時間とリソースを投じることになるだろう。
NACDの調査では、取締役の約40%が「リーダー人材の獲得競争」を重要課題として挙げている。
AIやデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進には、専門性と戦略眼を兼ね備えたリーダーの存在が不可欠だ。人材市場のグローバル化が進む中、各社は優秀な人材をめぐって国内外で競争にさらされている。さらに、組織や働き方に対する期待の変化を背景に、競争力のある報酬体系に加え、魅力ある企業カルチャーと柔軟な働き方を提示することが取締役に求められている。
このような状況で、組織の目標と個人の志向が一致した即戦力となる人材を確保するために、取締役会は後継者育成計画に一段と注力している。この取り組みは、経営の安定性を保ち、混乱を最小限に抑え、長期的な競争力の維持につながるであろう。
オジャーズ ベルンソンは、上記のような経営課題の解決に不可欠なリーダー人材の発掘・確保を支援しています。外部のエグゼクティブサーチや後継者育成計画を通じて安定した人材パイプラインを築き、取締役会があらゆる問題に自信を持って対処できるようにします。
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